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公示園(初版)

自序

現在の国語辞典で最有力なのが「広辞苑」であるが、そこにすべての語及び意味が収録されているわけではない。「広辞苑」などの一般の国語辞典は、どちらかというと日本人の大半が知らないような昔の単語や、難解な単語を集めたものとなっており、日々生まれては消えていく単語や意味については、手薄になっていると思われる。この「公示園」は、そんな単語や意味が集う園(その)となり、その園を読者に公示していく役割を果たすために編纂(へんさん)されたものである。


溺れるものは久しからず【オボレルモノハヒサシカラズ】

(1) [日本文学] 屁池物語の冒頭の有名な一節。時流に乗っているときは裕福な暮らしができるが、一度その繁栄に陰りが見えると、もう何をしても無駄で、そう長くは生き残れないことを意味する。中世の無常感がよく現れている。


キュッパ【キュッパ】

(1)[俗] 980円を差すが、単独で用いられることは希で、主に、1や2などの数字の後につけて用いられる。

 例)この置物はね、イチキュッパで買ったのよ。

(2)[業界用語] 売り手側が使用する良く売れるための値段設定の法則。品物の値段の末尾を「980」にする、という至って簡単なものである。2000円相当の品物なら、1980円で売り出せばよいだけである。この手軽さにもかかわらず、効果は絶大でなのだ。理由はいたって簡単。1990円なら2000円台という気がするが、1980円ならなんとなく1000円台なのだ。しかも、その商品が普段は3000円ぐらいで売っていたなら、1980円という価格は破格にさえ思えるから不思議である。

消費者側はこの「キュッパ」の法則に気付いていないわけではない。特に、衝動買い癖のある人は、店に入る前などは相当警戒しているはずである。にもかかわらず、「キュッパ」の値札の前に立つと、さっきまでの警戒心は消滅し、衝動買いをせざるをえなくなるのだ。これこそが、「キュッパ」の驚異的な魔力なのである。


啓示板【ケイジバン】

(1)人々に広く物事を啓示するための広告やビラを張るための掲示板のこと。主に、宗教勧誘などのビラが張られる事が多いが、出所不明で他団体を中傷するビラもあるので注意が必要。この自己主張の無法地帯といえる啓示板に下手に影響を受けると、取り返しのつかない事になるので注意が必要である。啓示板の中には計時機能までついた高機能なものもある。

 また、この掲示板をもとに事件が起こると、一般的に啓示事件として取扱われる。啓示事件は、刑事事件と形似しているが、形而上学的に処理される。


小学校の理科【ショウガッコウノリカ】

(1)それっぽい説明をしてはいるが、本質的な説明にはなっていないことを表す慣用句。

 [例]「ためしてガッテン」の説明は、〜のようだ。 

(2) [自然科学] 所詮、人類の考える科学では自然界の森羅万象を完全に説明することはできない、と主張する悲観主義者が使用する。どんなに科学が進歩しても、所詮小学校教育での理科のような、気安め程度の説明にしかならないということである。


日光欲【ニッコウヨク】

(1)[医学] 日光浴を欲する欲求のこと。人間の三大欲求(食欲、睡眠欲、性欲)に次ぐ第四の欲求といわれている。現在のところは太陽光線を望むがままに浴びれるので、さほど取りざたにされてはいない。しかし、将来オゾン層が破壊され、満足に日光を浴びることのできなくなると、この欲求が重要視されるといわれている。金持ちならば、現在の日焼けサロンに類似する日光風呂を自宅に作り、この欲求を解消することができるが、貧乏人は公共の日光風呂の入浴費さえ払えず、悶々とした日々を過ごさねばならない。彼らの中には、「死ぬまでに一回でいいから日に当たりたかった」という遺書を残して、野外に出て日光を浴びて絶頂を迎えながら、皮膚癌になって死にゆく者も出てくると予想されている。


巷【チマタ】

(1)世間。

 例)「その話どっから聞いてん」「〜の噂や」 

(2)テレビの情報番組で、料理や商品を紹介するときに使用される。

 例)これが今、巷でブームの・・・です

ただし、この言葉が使用されるときは、それはあまり流行しておらず、これから流行するという期待もそれほど持てないと思って良い。もし本当に流行しているなら、「これが今、大ブームの・・・です」と紹介されるはずである。さらに、「巷で密かなブームの・・・」などとなると、絶対に流行していないことが分かる。


中傷企業【チュウショウキギョウ】

(1)他者を中傷するために結成された企業。その筆頭が、阪神タイガースの応援団である。彼らは、試合中、他チームの選手をほんの二言三言のヤジで中傷し、戦意を失わせることが出来る。それだけでなく、彼らは阪神の選手を愛のこもった中傷により、やる気にさせる事まで出来るのだ。彼らは、そんな2種類の中傷が可能という卓越した技術にもかかわらず非営利団体である。彼らはボランティアなのだ。それゆえ、全国の中傷企業は、彼らのスカウトに必死である。しかし、彼らは莫大な契約金と年俸にもかかわらず、「俺等は、阪神が好きなだけやねん」とだけ言ってスカウトを断り続けるという、その道一筋の頑固さまで兼ね備えているのだ。


水に流す【ミズニナガス】

(1)過去のことはとやかく言わず、すべてなかったことにする事。

 例)あいつとの事は全て〜してやるよ。 

(2) [近代] 工場排水を、何の処理もせず川や海にそのまま垂れ流すことを言う。水俣病がマスコミで話題になったときに、何でも川や海に流せば自分には無害になる、という日本人のこの悪しき考え方を某男性週刊誌が「水に流すことの是非」というタイトルで痛烈に批判した。これによりこの語が民間に広く浸透し、その年の流口語大賞を取るに至った。一時は、琵琶湖の汚染改善のポスターに用いられるなどしたが、時代の流れと共にこの意味は忘れ去られ現在ではこの意で用いる人は少なくなった。

(3) [人名] 詩人、水丹永洲氏(1923〜1992)のペンネームの由来。1994年、酷眠永夜賞受賞。


水も滴る【ミズモシタタル】

(1)美男美女のたとえ。

 例)あいつは、〜ような良い男だ。 

(2)頭を洗った後や、雨で濡れた後に自分の顔を鏡で見ると、濡れた髪の毛のために、ナルシストでなくても、自分の顔のカッコ良さ、可愛さに酔いしれてしまうことを表す。転じて、髪が乾くと元の顔に戻ってしまう無常感をも表す。この無常感を感じるかどうかが、その人がナルシストであるかどうかの指標ともなりうるらしい。

(3)[人名] 詩人、水丹永洲氏の息子、水茂下樽氏(1944〜)のペンネームの由来。1976年に文壇デビューする。曲木賞や芥山賞エントリー回数は数えきれないが、受賞経験は一度もなく、無冠の帝王と言われている。


PU狙い【プ−ネライ】

(1)笑いのテクニック。「ぷぅぅうぅ〜♪」と、音程を変えながら言うことによって笑いを誘うことができる。このテクニックは、主に小学生低学年に有力である。

(2)しりとりの必勝パターンのうち、最も有力なもの。相手が言った言葉に対して「Pu」で終わるものを言い続けるというもの。「Pu」で始まる語の語数は少ないにも関わらず、外来語を用いることにより「Pu」で終わる語は見つけやすい。それゆえ、相手が返した語に対して、こちらが「Pu」で終わる語を言い返せないときは、注意が必要だ。そこでもし、相手が「Pu」で終わる語を言ったなら、形勢が逆転するからである。ただし、「Pu」「Bu」「Fu」を同等として取扱うルールの場合は、Pu狙いは無力になる。この場合は、「I」狙いや「Ru」狙い、「Ri狙い」などが効果的であるが、Pu狙い程の破壊力はない。
 英語でしりとりをする際に、Pu狙いに相当するのが、「X(エックス)狙い」であるが、本場では禁じ手となることが多いらしい。


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